「あ〜、疲れた。」

と声を出して大の字になって寝そべった。
そこは演習場の一角にある草むらだった。いい風が吹いている。草が揺れる。気持ちが良い。
里は順調に復興している。最近では余裕が出てきて、五代目の火影岩を作り始めている。大蛇丸も、暁の組織も壊滅したわけじゃない。常にどこかで不穏の影はあり、おどろおどろしい任務は後を絶たない。
そんな中で、たまの休日だった俺は演習場で新技の開発に勤しんでいた。里を守るため、二度と不覚を取らないためにも努力は、鍛錬は必要だった。

「カカシ、そろそろ昼にするか?」

顔に影ができたと思ったら横からイルカが寝転がっている俺の顔を覗き込むようにして立っていた。

「ん〜、そうだね。今日のおかずはなに?」

「なにって、色々だよ。それよかこないだみたいにチャクラ切れで動けなくなってるなんて言うなよ?」

先日もこんな風にお弁当を持ってイルカと共に演習場で鍛錬していたが、どうにも熱が入りすぎてチャクラ切れを起こして結局病院のお世話になってしまったのだ。その時のイルカの呆れきった顔は怖くて思い出したくない。
俺はイルカに向かって腕を伸ばした。

「ね、起こしてよ。」

イルカはため息を吐きつつも俺の手を取った。俺は力を込めてイルカを引っ張った。覚悟していたのだろう、イルカは大した抵抗もせずに俺の上にかぶさってきた。
トクトクとイルカの心臓の音が響いてくる。ぎゅっと抱きしめるとイルカの匂いがする。風に揺れる木の葉の音と、穏やかな陽の光りと、愛しい者の体温と。

「このまま止まればいいのに。」

「何言ってんだか。俺の作った弁当が食えないってのか?」

「あ〜、それは嫌だなあ。」

「だったらさっさと起きる。」

イルカは俺の拘束から逃れると立ち上がった。そして弁当の置いてある木陰へと向かった。俺も立ち上がってイルカの後をついていく。
柔らかな草地の中にどっかりと腰を落ち着けてイルカの差し出す重箱の中身をつつく。

「そう言えばそろそろイルカの誕生日じゃない?」

白身魚の香り上げを食べつつ言えば、イルカは中華風ちまきの笹の葉を取りながらそうだな、と適当に相づちを打つ。

「ちょっと大きな買い物してプレゼントしていい?」

イルカは途端、何か不穏なものを感じたのか、渋面を作った。や、そんな嫌そうな顔しなくたっていいのに。

「お前のちょっとしたプレゼントって、正直言ってかなり俺の許容量越えるんだよ。怒らないから具体的に何を贈ってくれるのか言ってみろ。」

本当に怒らない?怒らない怒らない、を何度か繰り返して俺は正直に話した。

「一軒家。」

「出直して来いこの野郎。」

張り付いた笑顔の中に青筋が見えていた。

「やっぱ怒ったじゃん。何が怒らないだよ嘘つきっ!!」

「だから俺の怒りの許容量の範疇越えてるんだっつのっ!!お前普通誕生日プレゼントに一軒家なんて贈るか?贈らねえだろうがっ。」

「だからちょっとした大きな買い物を、」

「どこがちょっとだっ。少しは老後を考えて貯蓄しろよこの野郎っ!!」

俺はため息を吐いた。だから言いたくなかったのに。

俺はいじけてすぐ側の草をぶちぶちとむしり始めた。草の青臭い匂いが立ちこめる。そんな俺を見かねてイルカはなんで一軒家になったんだ?と聞いてきた。

「別に、どんな家だっていいんだけど、やっぱりシステムキッチンとかあったらイルカは使いやすいだろうし、風呂だって24時間入れるようなハイテクなのがいいでしょ?」

「なんだよその取って付けたような曖昧な理想像は。」

俺はいや〜、ま〜、と口を濁す。

「おおかたアスマ先生か紅先生にそろそろ同居しないのかとでも言われたんだろうが。」

イルカの言葉に俺はえへ、と愛想笑いを浮かべた。

「そんなんだったら別に俺の家でもカカシの家でもどっちでもいいじゃねえか。お互いがそこにいるかいないかの違いだろ?一緒に住みたきゃどっちかの家を引き払えばいいだけじゃねえか。」

一軒家を購入するなんてそんな勿体ないことができるかこの浪費家がっ!とイルカは唐揚げをぱくりと食べた。
うん、そうなんだよね。一緒に住みたいんだけど、俺の家は未だに冷たい印象しかない家で、イルカの家は、その、ちょっと二人で住むには手狭と言うか、ねぇ。

「別に同居するのが嫌だとか言ってるんじゃないんだから、急いで決めなくたっていいだろ?」

イルカは水筒に入っていた冷たい麦茶をコップに注ぐと俺に渡した。そして自分の分も注いだ。

お弁当はだいたい食べ尽くして、あとはデザートの苺が残っているだけだ。俺はその赤い食べ物を口に入れる。甘酸っぱい味が口の中に広がった。苺の中ではかなり甘い部類に入るだろう。

「ねえ、イルカはさ、俺と恋人としてつき合うようになってからなんだか俺に対する態度が柔和にならなかった?」

「は?」

「以前だったらなんて言うかな、遠慮なくずけずけとした物言いをしてたけど。今だって俺のこと邪険にしないし、なんだかんだ言って我が儘聞いてくれてるじゃない?」

そうか〜?とイルカは自分の行動を振り返っている。俺はえーい、とイルカを押し倒した。

「ばっか、お前、コップの中にまだお茶が入ってたんだぞ。服にかかったらどうするんだ。」

「ほら。」

「は?」

「前だったらきっと『服にかかるだろうがどけよカカシっ!!』みたいな感じではねのけたと思うわけよ。でも、今はコップにお茶が入ってなかったら別に押し倒しても良かったってことでしょ?それはイルカが俺に前からそういう態度を取りたいと思っていたけど頭でセーブしていて行動に移せなかったのか。それとも恋人になったからそういうのも許せるようになったのか。」

「ばっ、馬鹿かっ!べ、別にそんなの関係ないだろうがっ!」

イルカは顔を真っ赤にしてふざけてんじゃねえよっ、と殴りつけてくる。

俺はその拳を軽く避けながら、至って真面目に考察してイルカに話したつもりだったんだけどなあ、と思った。
そしていい加減避けるのも面倒くさくなると、イルカの両腕を拘束して口にキスを落とした。

「ふふ、苺の味だ。」

イルカも俺も苺を食べたのだから苺の味がして当然なわけだが、それだけのことでなんだかひどく愛おしく感じてしまう。
イルカはやっぱり顔を真っ赤にしているが、顔を背けようだとか腕の拘束を無理矢理解こうとはしない。

「イルカ、好き。」

言って俺は拘束を解いてそのままイルカの上に乗っかった。イルカは解かれた両腕を俺の背中に回してぎゅっと抱きしめてきた。
それだけで答えは返されたようなものだった。目を閉じて午後の日溜まりの中でゆっくりとまぶたを閉じる。
意識が睡魔のまどろみの中に落ちそうになる一寸前、イルカが好きだからに決まってんだろ、と言ったような気がした。
俺は肯き返すことができただろうか。
ねえ、先生、先生の思い描いてた理想郷、少しだけど俺も作ることができたよ。
愛する者が何に遠慮することなく愛し合えるような平和なイチャパラの世界。イルカの腕の中に、それはある。

 

おわり 


はいっ、お疲れ様でした。こんなだらだらとただ長いだけの話しをここまで読んでいただいてほんともう、ありがとうございますっ!
ちなみに題名の「Always」は唯一知っているボンジョビの曲から拝借です。いい曲ですよね、歌詞わからないけど(オイ)
ここまで引き延ばしておいてキス止まりかよっ!なんて思われたかもしれませんが、私もそう思います。(自分で言うなよ。)
そんなわけで後日談的なものが裏にありますので興味のある方はがんばって探してみて下さいな♪
はっきり言って文才のなさに落胆しそうな内容です!なので期待はしない方がいいですよ〜。